Accessibility Newsletter (旧OSDだより) 第3号 平成28年3月 障害者差別解消法と筑波大学版対応要領 障害者差別解消法と筑波大学版教職員対応要領  障害者をとりまく社会状況は大きなターニングポイントに差し掛かっていると言われています。その法的な根拠の一つが本年4月に施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(通称障害者差別解消法)です。この法律では、国の基本方針、対応要領、対応指針を定めることになっており、国立大学は、法人全体の義務として、教職員の服務規程である対応要領を策定することが義務付けられています。  筑波大学では、昨年秋からダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター、附属病院、附属図書館、附属学校関係者等が協議を重ね、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」(差別的取扱いならびに合理的配慮の例示からなる留意事項を別紙とする)が策定されました。 筑波大学版「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」  この要領は、「本学の学生並びに附属学校の児童生徒、附属施設等の利用者が障害を理由とする差別を受けることのないよう、本学の教職員の講ずべき措置を定めるもの」とされ(前文)、以下の事項が記載されています。 第1条 目的 第2条 定義 第3条 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 第4条 障害を理由とする差別の解消に関する推進体制 第5条 監督者の責務 第6条 不当な差別的取扱いの禁止 第7条 合理的配慮の提供 第8条 相談体制の整備 第9条 紛争防止等のための体制の整備 第10条 教職員への研修・啓発 第11条 懲戒処分等 この要領では、障害を理由とする差別を解消するため、二つの中核となる考え方が述べられ、その実効性を担保するための推進体制について、筑波大学の方針が掲げられています。 (1)不当な差別的取扱いの禁止  正当な理由のない、障害者の権利利益の侵害を指しています。大学における例として、障害があることを理由に、受験を拒否すること等がこれに該当します。 (2)合理的配慮の提供  合理的配慮とは、個々の学生の状況に応じた環境やルール等の調整・変更、意思疎通のための配慮で、均衡を失した又は過重な負担を課さないものを指します。合理的配慮は個々の学生の状況により多様で、建設的対話が不可欠となります。  筑波大学における障害学生支援もまた、新たな時代を迎えようとしています。障害のある学生にとって、自らのニーズと必要な配慮(調整)を教職員に伝える能力を見に付けることが一層必要になると思われます。また、教職員の皆様には、対応要領と留意事項を参考に、学生との建設的な対話を深めていただけますようお願い申し上げます。 障害を理由とする差別の解消に関する法律: http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/law_h25-65_gaiyo.pdf 障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を4月以降公開予定 シリーズ:発達障害学生の理解と支援 第2回   注意欠如・多動性障害(ADHD)の学生の支援  前号では発達障害のひとつである「自閉スペクトラム症(ASD)」の障害特性と修学上の困難さを紹介しました。今号では同じく発達障害のひとつである「注意欠如・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)」の特徴と、ADHDのある学生がどのようなことに困っているのかをご紹介したいと思います。 注意欠如・多動性障害(ADHD)とは  ADHDの診断基準に含まれる基本的な症状は次の3つです。 1. 不注意:集中力を維持できない、気が散りやすい、物忘れが多い 等 2. 多動性:じっとしていられない、過剰に動きまわる 等 3. 衝動性:考える前に突発的に行動に移してしまう、待てない 等  症状の表れ方は人によって異なり、不注意が目立つ場合、多動性や衝動性が目立つ場合、両方が見られる場合など、さまざまです。通常は7歳以前に症状が表れており、生活の複数の場面で同じように症状が見られていることが判断の基準になります。 ADHDの学生の困り感  ADHDの学生が大学での生活でどのようなことに困っているのでしょうか。ここでは2つの仮想事例を通じて、具体的な困り感と、それを補う方法の例を紹介いたします。 事例1: 授業中に指示した次回までの課題や準備をしてこないことが多い。真剣さが足りないのか、障害があるためなのか判断がつかない。  集中力を維持することの苦手なADHDの人の中には、努力をしていても数分おきに自然と注意が逸れてしまい、授業中であっても気がつくと違うことを考えているという人もいます。次回までの課題などの重要な情報については、後からでも参照できるように、配布資料に記載しておくと良いでしょう。このような「後に残る」形で情報を伝えることは、ADHDに限らず、多くの発達障害の学生に有効です。  一方の学生も、配布された資料をファイリングする、課題の内容と期限を手帳などにわかるように転記する、リマインド機能のあるアプリケーションを使うなど、苦手さを補うスキルを身につけることが大切になります。 事例2: 欠席が多く、このままでは単位を出すことができない。  集中力のコントロールが苦手で時間うまく使えず、結果として生活リズムを崩してしまうADHDの学生は少なくありません。中には生活習慣やアラームの活用などの相談に乗るだけでは解決が難しく、服薬や外部の支援機関の手助けが必要な学生もいます。状況が深刻であれば、まずは総合相談窓口や保健管理センター、アクセシビリティ部門等の活用を検討してみましょう。 平成28年度新入障害学生ガイダンスの開催  ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター アクセシビリティ部門では、来る4月4日(月)9時30分より2B412教室において、新入障害学生ガイダンスを実施します。新入障害学生全体を対象に、ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターの紹介および支援利用の流れ等の説明を行うと同時に、共通科目に関する支援についての個別面談を実施します。 教育組織の教職員のみなさんへのお願い  ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター アクセシビリティ部門では、自由科目「障害学生支援技術」を通して、障害学生を支援するピア・チューターの養成を行っています。ピア・チューターとは、筑波大学の障害学生を支援する有償の学生ボランティアです。      4月25・27日に行われるオリエンテーションの前に、いくつかの授業を選んで授業宣伝に伺います。皆様のご担当科目が選ばれた際には、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。 アクセシビリティ部門 事務機能移転のお知らせ  4月1日より、アクセシビリティ部門の事務機能が、スチューデントプラザ2階 就職課に移転します。  障害学生支援に関するご相談につきましては、これまで通り裏面の連絡先にお寄せください。 【報告】 筑波大学・名古屋大学共同企画シンポジウム 第10回筑波大学全学FD研修会 英国ケンブリッジ大学における障害学生支援  2月29日に名古屋大学と本学の共同企画シンポジウム「英国ケンブリッジ大学における障害学生支援」が開催されました。本シンポジウムでは、英国ケンブリッジ大学のDisability Resource Centreから、センター長の John Harding氏、及びアドバイザーのHelen Duncan氏を招聘し、英国ケンブリッジ大学での障害学生支援について、ご講演いただきました。  シンポジウムに先立ち、John氏とHelen氏に加え、共同企画者である名古屋大学の坂野尚美氏、協賛いただいた大和証券ブループの古閑理可氏が、筑波大学永田恭介学長を表敬訪問し、高等教育での障害学生支援や、特異な才能を持った学生の教育に関する話題を中心に、情報交換がなされました。  その後のシンポジウムにおいては、学内・学外あわせて約80名の参加者が集まりました。John氏からは「英国における平等法と高等教育機関の障害学生支援」という題目で、Helen氏からは「ケンブリッジ大学における障害学生の評価及び支援」という題目でご講演いただき、発達障害を中心とした障害学生の支援体制がまだ十分に組織化されてない我が国の現状に際し、たいへん貴重なご示唆をいただきました。 ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター アクセシビリティ部門 アクセシビリティ部門に関するご相談がございましたら、下記までご連絡ください。 場所:第2エリア 2A208 開室時間:8:30~12:15, 13:15~17:15 TEL/FAX:029-853-4584 (内線4584) E-mail:shogai-shien@un.tsukuba.ac.jp URL:https://www.human.tsukuba.ac.jp/shien/