筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターアクセシビリティ部門 2017年2月22日発行 Accessibility Newsletter 第3号 平成29年2月 タイトル:定期試験時の障害学生への配慮について① 今年度、先生方からご質問が多かった定期試験時における障害学生への配慮事例について紹介いたします。配慮において不明な点は学生本人にお尋ねいただくとともに、不足ある場合にはアクセシビリティ部門までお問い合わせください。 Q. 定期試験での配慮依頼があったのですが、具体的にはどうしたらいいでしょうか? 定期試験や小テスト等においても、入試に準じた支援を行うことが望ましいのですが試験の内容や分量などによっては、個々の授業担当者の配慮で十分に試験が行える場合もあります。配慮依頼文書をもとに当該学生と相談の上、実施方法の決定をお願いいたします。「試験問題の点訳」、「試験時間の延長」、「別室での受験」などについて不明な点は本部門までご相談ください。 試験問題の出題形式・解答方法の変更 例 上肢等に障害がある学生  PCによる解答、代筆による解答などから試験内容等に応じて選択します。   本部門にて学生に「試験解答用のPC」を貸し出しております(PC内データ等削除済み、ネットアクセス不可に設定)。 点字を利用する学生       点字利用学生には、点字出題・点字解答が原則になります。  本部門にて「試験問題の点訳」「点字解答の通常文字への墨訳」の依頼を承ります。 試験問題点訳依頼方法 点字問題の作成及び点字答案の通常文字への墨訳に当たっては、点字についての高い専門性、正確性、セキュリティの保持が求められます。それらの条件を満たす組織として、「全国高等学校長協会入試点訳事業部」があります。  ※試験問題の点訳にはおよそ2週間ほど時間を要すため、先生方には早めの問題作成にご協力をお願いいたします。 ①試験前:試験問題の点訳   試験問題のデータの提供を試験実施日2週間前までに本部門にお願いします。  本部門で事業部に点訳を依頼し、試験数日前までに点字問題をお渡しします。  なお、試験問題に図表・絵など文字以外の情報が含まれる場合は、出題方法をご相談させていただく場合がございます。 ②試験後:学生の点字解答の通常文字への墨訳  学生の点字解答用紙を本当部門までお渡しください。  通常文字に墨訳し、試験実施日の1~2週間後に先生方に返却します。 試験時の時間延長と別室の確保 例 点字や拡大文字の利用、代筆、上肢等の障害などにより読み書きに時間がかかる場合には、試験時間の延長と、それに伴う別室受験が認められています。 例)点字利用学生(1.5倍)弱視学生(1.3倍)上肢等障害学生(1.3倍または1.5倍) ・一般の学生と試験開始または終了時間をずらし、別室・試験監督者を設けます。 ・一般の学生の試験時間を50分とし、時間延長学生は1.3倍=65分、1.5倍=75分とし、すべての学生が1コマ内で終わるようにしている例もあります。 2ページ目 海外の大学における障害学生支援 英国・ケンブリッジ大学の障害学生支援 アクセシビリティ部門では、障害学生支援に力を入れている海外の大学との情報交換を積極的に行っています。本稿では、昨年度より密に情報交換を行っている英国・ケンブリッジ大学の取り組みを紹介したいと思います。 ケンブリッジ大学の障害学生  名門として知られるケンブリッジ大学は、学部学生と大学院生を合わせて約19,500人の学生を有する、本学よりやや規模の大きい英国の国立大学です。そして、2016年現在、全学生の約10%にあたる2,089人の学生が、障害学生支援を担当するDisability Resource Centreに登録されています。日本の高等教育機関における障害学生の割合が0.68%であることを考えると、これは驚くべき数字です。  障害の種類別に見ると、Specific Learning Difficulties(SpLD)と呼ばれる読み書きの困難のある学生が突出して多いのが特徴です。日本でも同様の特徴をもつ学生はいますが、特に英語の読み書きで困難が表出しやすいと言われています。また、近年では精神障害やアスペルガー障害の学生も増加が顕著とのことです。 図:障害の種類別の割合 Specific Learning Difficulties (SpLD)が約30% 精神障害が20% 内部障害が20%弱 以下、重複障害、運動障害、アスペルガー等、その他の障害、視覚障害、聴覚障害と続きます。未診断の方もいます。 障害学生支援の特徴  英国の大学における障害学生支援は、①講義や指導における合理的調整(reasonable adjustment)と、学生の学習や適応をサポートするための人的支援(human support)が提供されています。以下はその一例ですが、特にメンタリングやスタディスキルの支援は、日本の大学では整備の遅れている機能です。本学でも今後の機能強化のメニューとして検討を進めたいと考えています。 サポートの一例リスト ❏講義・指導における合理的調整:資料の事前配布、録音の許可、リーディングリスト(読むべき文献)の優先順位の明示など ❏定期試験の調整:試験時間の25%の延長、別室受験 ❏ノートテイク:ノートテイカーによる手書きやPCでの講義内容の記録作成 ❏メンタリング:専門スタッフによる学習の計画や時間管理、対人関係等についての個別相談、アドバイス ❏スタディスキル:時間の管理、文献の読み方、自分の考えを構造化する方法、テストテイキング等の技術を1対1、グループ、Skype等で指導 ❏支援機器の貸し出し:文章の読み上げソフトやICレコーダー等、障害による困難さを補うソフトウェアや機器の貸し出しと使用方法についての指導 平成29年度新学期にむけて 教育組織の教職員の みなさまへのお願い ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター アクセシビリティ部門では、自由科目「障害学生支援技術」を通して、障害学生を支援するピア・チューターの養成を行っています。ピア・チューターとは、筑波大学の障害学生を支援する有償の学生ボランティアです。 【ピア・チューターが担う支援の例】 視覚障害学生:テキストデータ化、対面朗読 聴覚障害学生:PC要約筆記、映像教材文字おこし 運動障害学生:ノートテイク(代筆)、移動支援  本学には多くの障害学生が在籍しており、ピア・チューターは不足している状況です。ひとりでも多くの学生さんに本取り組みを知っていただき、活動に参加していただければと考えております。そこで、4月末に行われる障害学生支援技術オリエンテーションの前に、いくつかの授業を選んで授業宣伝に伺います。皆様のご担当科目が選ばれた際には、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。 平成29年度新入障害学生ガイダンスの開催 ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター アクセシビリティ部門では、来る4月5日(水)に新入障害学生ガイダンスを実施します。新入障害学生全体を対象に、本センターの紹介および支援利用の流れ等の説明を行うと同時に、共通科目に関する支援についての個別面談を実施します。 【今後の取り組み】 別室受験のためのテスティング・ルームの運用  障害のある学生の別室受験を行う際に生じる問題のひとつに「教室の確保が難しい」ことがあげられます。そこで、アクセシビリティ部門では、別室受験に必要な設備を整えた「テスティング・ルーム」を試験的に運用することといたしました。各教育組織の所管する教室で別室受験に対応できない場合、以下の要件を満たしていれば利用することができます。 必要な要件 ・学生本人の希望がある ・授業担当教員が認めている ・別室受験の必要性を示す根拠資料がある(注意:教育組織の長ならびにアクセシビリティ部門長の連名による配慮依頼文書がすでに発行されている場合は不要です。) ・教育組織で試験監督の手配ができる テスティング・ルームへのアクセス  現在、中地区にある「共同研究棟A114」にテスティング・ルームを設置しております。ただし、試験的運用につき、今後は場所が変更になる可能性があります。また、平時は施錠をしておりますので、下見等をご希望の場合は、事前にアクセシビリティ部門までご連絡ください。 (図:キャンパスマップ:中地区K7 共同研究棟A114) ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター アクセシビリティ部門 アクセシビリティ部門に関するご相談がございましたら、下記までご連絡ください。 場所:スチューデントプラザ2階アクセシビリティ部門開室時間:8:30〜12:15, 13:15〜17:15 TEL:029-853-4584(内線4584) FAX:029-853-2257 E-mail:shogai-shien@un.tsukuba.ac.jp URL:https://www.human.tsukuba.ac.jp/shien/ Accessibility Newsletter (平成28年度) vol.3(通巻9号)