障害学生支援(OSD)だより 第2号 平成27年10月 ~障害学生と災害・避難~ 障害学生と災害  障害のある学生は、災害時、素早い避難が難しい(運動障害・視覚障害)・緊急時の情報を素早く入手するのが難しい(視覚障害・聴覚障害)といった困難があります。  東日本大震災の際には障害学生も学内で被災し、他の学生とともに一次避難所に避難したり、しばらくは停電・断水の中で生活しました。最近の震度5程度の地震でも、エレベーターの復旧が遅れ、「2階以上の教室での授業に参加できない」「アパートのエレベーターが停まって登校できない」(いずれも車いす利用学生)という報告がありました。  災害はいつどこで起こるかわかりません。学内障害学生支援室では昨年度、障害学生避難誘導ガイド第1版「障害学生の避難手順について」を作成・公開しました(https://ksp.sec.tsukuba.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2014/11/20141118SD_evacuation_guide.pdf)。  ガイドでは、障害学生を一次避難場所まで避難誘導する際の注意点をイラスト入りでわかりやすく説明しています。いざという時にご活用いただけるよう、ぜひご一読ください。ここでは一部を紹介します。 ・避難指示  授業履修者に障害学生等で独力での避難が難しい学生がいる場合には、通常の避難指示・誘導に加えて、以下の手順を行ってください。 ①屋外避難の際に情報支援や誘導などの支援が必要な人がいるかどうか確認する。 ②避難に支援が必要だが、近くに支援者がいない場合には、その場で配置する。 ・残留者確認  残留者確認担当の教職員は建物内の点検の際には、聴覚障害などで呼びかけや音への応答が難しい学生がいる場合も想定して、ライトの点滅を利用するなどの工夫が必要となる。 ・障害別の避難の留意点については、避難ガイドをご参照ください。 シリーズ:発達障害学生の理解と支援  前号では近年高等教育機関に在籍する発達障害学生の数が増加しているという記事をのせましたが、今回からは「そもそも発達障害とは?」ということについて考えたいと思います。  最近テレビやネットでよく「発達障害」という表現を目にするようになりました。発達障害という名称は、いくつか異なるタイプの障害の総称として用いられています。その中の1つのタイプである自閉スペクトラム症(ASD)について、医学的な診断名と障害の持つ修学上の困難さの一例をご紹介します。 ・自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)  ASDは、いわゆる「空気が読めない」や「頑固で融通がきかない」といった特徴で表現されることが多い障害で、少し前までは、広汎性発達障害(PDD)、アスペルガー症候群や高機能自閉症と呼ばれていました。ASDの中核的な困難さとして、①コミュニケーションの困難さ(例:自分の思いをすぐに言葉にすることが苦手)、②社会性の困難さ(例:相手の気持ちが理解が苦手)、③想像力を働かせることの困難さ(例:予定外の出来事への対応が苦手)があります。それらが組み合わさって、彼らは「暗黙の了解」や「あいまいな表現」が理解しづらく、トラブルにつながることが多いとも言われています。  ここでは2つの事例について考えてみたいと思います。 事例1)授業中に何度も質問して、進行を妨げてしまう。  事例1についてはまさに暗黙の了解が理解できていないケースだと考えられます。私達は誰から教えられるというわけでもなく、一般常識をなんとなく理解していますが、ASDの学生はそれらの社会的ルールが理解できていない場合もあります。こういった事例に対しては、「授業中の質問は3回までです。もし他に質問がある場合は出席票の裏に書いてください。」と具体的にルールを伝える方法が有効であると考えられます。 事例2)論文執筆の際に「ある程度できたら持ってきて」と伝えたが学生がなかなか原稿を持ってこない。サボってるのかなと思って学生を呼び出してみると、執筆は進んでおり、「どこまでできれば持って行けば良いのかわからなかった」との反応が返ってきた。  事例2については、「ある程度」という表現が理解できずに苦しんだ事例だと思います。この事例に対しても例えば「序論と方法まで書いて、◯月◯日までに原稿を持ってきて」といったように具体的に指示を伝えると学生も悩まなくてすんだのかもしれません。  ASDを持つ学生の中には、ルールや指示が明確に提示されれば、律儀に従うことができる学生が多いともいわれています。そのため、可能な範囲で具体的な予定やルールを事前に伝えておくことで、トラブルを起こさずに適応できる可能性が高まります。前号でもお伝えしたとおり、ひと言でASDといっても、その状態像は非常に多様ですので、個々の事例に対して対応策を考えていく必要がありますが、まずは彼らにとって「わかりやすい」環境づくりから一緒に考えてみませんか? 第5回筑波障害学生支援研究会  筑波大学障害学生支援室では、筑波技術大学と合同で「筑波障害学生支援研究会」を開催しています。5回目の今回は、2016年度からの 「障害者差別解消法」施行にともなう合理的配慮の提供をテーマとして、法律や、国立大学法人で作成が義務づけられる「対応要領」に関する内容が中心となります。講演では、米国での障害学生支援に関する事例をご紹介いただき、日本が今後直面するであろう課題について考えていきます。また、話題提供では、2つの大学から、支援状況や事例などの発表をいただく予定です。  参加を希望される教職員の方は、障害学生支援室までご連絡ください。 日時:11月5日(木)  場所:筑波技術大学天久保キャンパス講堂 問い合わせ先:障害学生支援室(029-853-4584) 新組織への移行  10月1日より、障害学生支援室は学生部就職課・キャリア支援室・ダイバーシティ推進室と合同の新組織「ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター」のアクセシビリティ部門となりました。  取り扱い業務は今までと変わりませんが、学生を様々な面から支援する部署と同じ組織になったことにより、よりいっそう一人一人の未来を見据えた障害学生支援を目指します。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。  電話番号、メールアドレス等はこれまで通りです。 平成27年度JASSO専門テーマ別セミナー  日本障害学生支援機構(JASSO)と筑波大学障害学生支援室の主催で、11月14日にJASSO専門テーマ別セミナーが開催されます。今回は「障害者差別解消法施行後の発達障害学生への支援を考える〜評価(アセスメント)、カリキュラム調整、キャリア支援など〜」というテーマで、大学における発達障害学生の最新の実態や修学支援、キャリア支援の実際についての話題を提供する予定です。  現在、高等教育機関に在籍する発達障害学生数は急増しており、それらの支援体制の整備は喫緊の課題となっております。本セミナーを通して、今後の高等教育機関において発達障害学生への合理的配慮のあり方を検討する一助になればと考えております。皆様の参加をお待ちしております。 日時:平成27年11月14日(土)9:30-15:40 場所:フォーラムエイト(東京都渋谷区) ※プログラムの詳細や参加のお申し込みについては以下のアドレスをご参照下さい。 http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/event/h27senmon_1.html RADDホームページの紹介  筑波大学障害学生支援室発達障害学生プロジェクト研究室(通称RADD)のホームページが完成しました!まだまだコンテンツは少ないですが、今後どんどん情報発信を行っていきたいと思います!要チェックです! http://radd.human.tsukuba.ac.jp/ <筑波大学障害学生支援室> (Office for Students with Disabilities) 障害学生支援に関するご相談がございましたら、下記までご連絡ください。 場所:第2エリア 2A208 開室時間:8:30~12:15、13:15~17:15 TEL/FAX: 029-853-4584 (内線4584) E-mail:shougai-shien@un.tsukuba.ac.jp URL : http://www.human.tsukuba.ac.jp/shien/